Edición Iman エディマン

杉浦勉さん逝く

残念な知らせが入った。

ぼくのところで出版した『シンコペーション/ラティーノ・カリビアンの文化実践』の編者、杉浦勉さんが亡くなった。

人間であるからには、死は避けられない。しかし、享年55。あまりに早すぎるというほかない。まだまだ、これからやっていただく仕事がある人だった。

杉浦さんについて、ぼくがとくに関心を持ってきたのは、いちはやく複数のアメリカ(アメリカスとかいうよね)という問題群に取り組んでいたことだった。メキシコからの合衆国への移民チカーノや、より広く、ラテンアメリカからの移民ラティーノの動きによく目配りをしてきた人だった。

そもそもは、キューバの作家、アレホ・カルペンティエールの翻訳から仕事をはじめた。1990年代のことだ。『シンコペーション』を出版した2003年は、まさに合衆国で、ラティーノの人口がアフリカン・アメリカンを抜いたといわれるような年だった。地域的に、どうしても活動は地味に見えてしまうかもしれないけれど、いずれも貴重な仕事だった。

ぼくにとって杉浦さんがスペシャルな存在なのは、『シンコペーション』が、エディマンにとってはじめての出版物だからだ。売れ行きは、とうてい自慢できるものではないけれど、自分で本を出すことの、楽しさ、たいへんさを思い知らされた。杉浦さんとの出会いがなければ、もちろんあり得なかった経験だし、この本を通してじつに多くの人たちと知己を得ることができた。編集期間は、何度も朝まで酒を呑んだ。

私事であるが、同書の共編者である、鈴木慎一郎さんと東琢磨さんと合同で長女の誕生プレゼントにバギーを贈っていただいた。その長女がもう6歳だ。この間、ぼくは二人の子どもを育てた。そして、あれから3冊の本しか出版できていない。

杉浦さんの訃報をお知らせしているうちに、自然と偲ぶ会をやろうという話になった。もし、杉浦さんと交流のあった方がいましたら、ご連絡ください。案内状をお送りします。

偲ぶ会で、久しぶりに会うことのできる人たちがいる。おそらく新しい出会いもあると思う。ぼくは、それが楽しみだ。ありがとう、杉浦さん。