『鵺(ぬえ)の鳴く夜を正しく恐れるために』その1
ごぶさたしております。
2014年も年の瀬が迫りました。
今年も平穏無事に終わろうとしていますが、ちょっと待ったあああ!!!!
久しく新刊を出していませんでしたが、この年末、待望の新刊を発行します。
タイトルは『鵺(ぬえ)の鳴く夜を正しく恐れるために――野宿の人びととともに歩んだ20年』。
著者は、野宿者支援・生活保護問題で長らく活動を続けている稲葉剛さんです。
192ページ、定価は1700円(税別)、エディマン発行、新宿書房発売です。
見本は12月19日にできる予定です。
全国の書店さんに年内に配本することは微妙な状況ですが、なんとしてでも今年中に出したかった理由があります。
ひとつは、なんといっても稲葉さんが野宿者支援の活動にかかわるようになって、今年が20年目の節目だということです。もうひとつは、役所など公的機関は年末年始はお休みとなるので、野宿の人たちはたいへんな苦労をされます。本書の出版により、わずかでもそのような実情がお伝えできるかもしれないと考えたからです。
稲葉剛さんについてはご存知の方も多いかと思います。近年では岩波新書『生活保護』という著書が有名です。稲葉さんは、大学院生であった1994年から新宿西口地下道のダンボール村で野宿者支援に取り組みはじめました。当時、新宿駅を利用していた方にはなつかしく、かつ印象的な風景だと思うのですが、当時の新宿駅西口、とくだん新都庁へと続く地下道は両脇にダンボールハウスが並び、多くの野宿者がその周辺で生活していました。その数は300以上とも500近くとも言われています。当時を知らない人には驚きかもしれませんね。
本書の出発の一つはこのダンボール村にあります。そこに暮らす人びとのかかえる問題に向き合った著者や仲間たちの活動の記録でもあり、そこに暮らす人びととの交流史といえるかもしれません。
あそこで暮らしていた人たちはどこへ行ったのか。ぜひ、本書を開いていただければと思います。
タイトルは、巻頭のエッセイからとりました。「鵺」というのは『平家物語』などに登場する妖怪で、顔はサル、胴体はタヌキ、手足はトラ、尾はヘビで、「ひょー、ひょー」と鳴いたそうです。見る人によって異なる姿を見せる対象に、社会はどのように対処できるのでしょうか。また、なぜ、同じものがこうまでも見るものによって変わってしまうのか。ぼく自身、おおいに考えさせられましたので、これを(わかりにくいと指摘がありましたが)タイトルにしました。
ぜひ多くの方に読んでいただきたいと思います。